2010.4.23[Fri]
「個展のお知らせ」
下記の予定で個展を開催させていただくことになりました。これまでの絵画、オブジェなどさまざまな作品を展示する予定です。会期が近くなりましたら詳細アップ致します。是非、足をお運びください。

ギャラリーユニグラバス銀座館
東京都中央区銀座8-12-11第2サンビル1F
http://www.uniglavas.com
5月24日(月)〜5月29日(土)
11:00〜18:00(最終日のみ16:00まで)

2010.4.13[Tue]
「戦艦ポチョムキン」
ショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」を皮切りに始まるサイレント映画『戦艦ポチョムキン』。監督セルゲイ・エイゼンシュテインがリアリズム表現と編集技術を駆使して映画づくりのモンタージュ論を確立した映画史上に残る傑作である。エイゼンシュテインがモンタージュ理論を確立したきっかけは一時期、日本人教師に漢字を習っていたからであり、象形文字の持つ抽象的概念を描写的デザインに表現しているという基本コンセプトからという話がある。エイゼンシュテイン本人が「ショットは単なる要素ではなく細胞であり、モンタージュは二つの細胞の衝突だ」と語っていることから、衝突=モンタージュ運動の結果としての思想がここにもうかがえよう。
『戦艦ポチョムキン』は1905年に実際に起こったポチョムキン号の反乱に題材に、十月革命への先導者として反乱の水兵たちをたたえたものだ。この反乱はロシアの1905年革命における最大の艦隊反乱。その背景には、旅順要塞陥落や対馬沖でのバルチック艦隊の壊滅といった日露戦争(1904〜05)敗北のなかで、上官の退廃と横暴に対する兵士・水兵の不満の高まりがあった。エイゼンシュテインはこれを動的な画面、速いテンポ、大胆な構図、断片的モンタージュという独特な特徴をみせながら、「水兵たちと蛆」「甲板上の反乱」「死者の訴え」「オデッサの階段」「艦隊の出会い」という五部構成で見事に描き出している。
モンタージュ…時間差で事態を了解する意識、その間隔。視覚的連続性の廃棄によるからなのか、肉体が無意識下で反応し「残像」がいつまでも頭をめぐる感覚に襲われる。表示される物事を瞬間的に捉える能力と、残像として残した記憶はどのように違い、どのように蓄積されていくのだろうか…。
ちなみに話は変わるが、エイゼンシュテインのこの映画を観ていると小林多喜二の『蟹工船』が脳裡をよぎる。時空を越え、響き合う両作。遠い国に住むこの二人のスピリットはどのように響き合っていたのであろうか…。

2010.4.4[Sun]
「展覧会のお知らせ」
ギャラリーユニグラバス銀座館において開催される「ユニグラバス小品展」に数点展示させていただきます。是非ご高覧ください。

ギャラリーユニグラバス銀座館
東京都中央区銀座8-12-11第2サンビル1F
http://www.uniglavas.com
4月12日(月)〜4月17日(土)
11:00〜18:00(最終日のみ16:00まで)

2010.4.2[Fri]
「烏鷺」
今年は桃山時代の絵師、長谷川等伯の没後400年にあたり、東京国立博物館と京都国立博物館において特別展が開催されているが、その中に「烏鷺図屏風」という晩年の頃に描かれた詩情溢れる幽玄な水墨画が展示されている。それは、左隻に激しく争い合うカラス、右隻に穏やかな姿態を見せるサギが、動と静、黒と白、闘争と平穏などのコントラストで巧みに表現された名作である。
諺で「烏鷺(うろ)の争い」などと昔から対比されているカラスとサギであるが、この情景を実際に見ることができる奇妙な場所が存在する。そこは埼玉県行田市、清善寺という、天文3年(1534年)開山、慶長9年(1604年)に徳川家康より寺領30石の御朱印を受領した寺である。奇しくも長谷川等伯の生きた天文8年(1539年)〜 慶長15年(1610年)と時が重なることもあってか、等伯が「烏鷺図屏風」を描くきっかけになったのはこの場所であり、400年の時空を超え、今自分が同じ場所に立っているのではないか…という不思議な浮遊感覚と錯覚に襲われてしまう。何の根拠もないが…。
ただ、実際に清善寺で目の前に繰り広げられる光景は、夜にも関わらず数十羽のカラスとサギが薄気味悪く大声で鳴き散らしながら、隣合った樹に作ったテリトリーをお互い一歩も引かず守ろうとして飛びかう姿だ。等伯の「烏鷺図屏風」から受ける印象とはあまりにも大きくかけ離れている。不意打ちの悪夢から目覚めた時のような芯から叩きつけられてしまった感覚。怪奇現象や妖怪を目の当たりにしているような不協和音が身体中を駆け巡りゾッとする。次の瞬間、不意にフランシス・ベーコンの激しく歪められた絵が頭をかすめていく。カラスとサギと等伯とフランシス・ベーコン。一体何の関係があるのだ…という想い。



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